
ヘルマン・ヘッセの作品の原題は、その多くが主人公の名前なんですよね。「春の嵐」も「知と愛」も。
東京の西でくもん教室を開いているすずきです。
イッパイアッテナって何ですか? それはねこの名前です。
あとがきによれば、この本は、ねこが書いた自伝を、斉藤さんが清書したものだそうです。
何だか不思議に包まれたお話しだと思いませんか。なんか面白そうと思って「プロローグ」を読んだら、もうあなたは、この本にはまっていると思います。

『ルドルフとイッパイアッテナ』は「くもんのすいせん図書」に選ばれています。
私はくもん教室を始めてから、”くもんのすいせん図書”を知り、そこに紹介されている本を、日々楽しみながら、趣味を超えたライフワークとして読んでいますよ。

面白そうな本がたくさん紹介してあって、ゆうすけが、また勉強しないで本読んじゃうわね。
ねこが力強く生きて行く姿
著者の斉藤洋さんは、非常勤講師だった34歳のときに、この作品を書いて、講談社児童文学新人賞をとりました。1986年ですから、私が小学生のときには存在していなかった作品です。Wikipediaによれば、たくさんの児童文学を書いており、翻訳もしています。
ねこが人間社会を観察する小説といえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』が有名ですね。このお話しは、ねこが教養を身につけ、人間とうまくやりながら、力強く生きて行く姿を描いたものです。
勉強することの意味についても、さりげなく書かれていますよ。
キョウヨウとは心の豊かさ
皆さん、教養ってなんでしょうか。
「そのうちぼくにもわかってきた。だれにだって、きかれたくないことがあるってことが。」
主人公の黒ねこであるルドルフが、大きなトラねこのイッパイアッテナに、このことを打ち明けると、「おまえも、だんだん、ものがわかるようになってきたなあ。そういうのを、教養っていうんだ」と言われます。
「ことばを乱暴にしたり、下品にしたりするとな、しぜんに心も乱暴になったり、下品になってしまうもんだ。」
「それからな、ルド。おまえ、このあいだの夜、字が読めないブッチーをからかっていただろう。ああいうことをしてはいけない。…(中略)ちょっとできるようになると、それをつかって、できないやつをばかにするなんて、最低のねこのすることだ。」
イッパイアッテナはルドルフにたくさんのことを教えます。教養は、知識だけではなく、それによって養われる、心の豊かさをいうんですね。
怒りが百万倍の力を発揮
このお話しは、教養の他にもう一つ、「怒り」ということがテーマになっていると思います。
ひどい仕打ちにあって、見返してやるぞと思うときに感じる「怒り」です。
「おれは、ねこでもいぬでも、人間に飼われて、のうのうと生きているやつがきらいなんだ。」
とイッパイアッテナは言います。どうしてそんな風に思うようになってしまったのかというと、「てのひら返し(今までの態度を一変させること)」という経験をしたからです。
自分がひどい目に遭うのなら我慢できても、大切な人が馬鹿にされたり、悪口を言われたりすると、許せないですよね。その「怒り」は頂点に達します。みなさんもそんな経験ありませんか。
この怒りに火がつくと、ひとは百万倍の力を発揮します。いや、失礼。このお話しでは「ねこ」でした。
あなたが『ルドルフとイッパイアッテナ』を読んだ後どう思ったのか、いつかぜひ聞かせてください。

保護者さまへ
実は、勉強ぎらいな子が読んだら、もしかしたら、すごくやる気になるかも、なんて思ったりもしました。知識を広げることから、知恵が身に付き、賢く生きることができる。そして、人の気持ちが分かるようになる。
「そうなのか。だから勉強は大事なのか」と、子ども心に思ったらうれしくないですか。
ただこれは、あくまで私の妄想です。
文庫版もありますが、小学生には単行本の方が読みやすいかと思います。講談社英語文庫から英訳版も出ていました。ただ、ページ数がかなり少ないので要約版のような気がします。
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