『夏の葬列』~たった10分で味わえる、衝撃の結末とそこからの人生

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夏が過ぎ 風あざみ…… みなさん、お元気ですか?

東京の西でくもん教室を開いているすずきです。

『夏の葬列』には、一人の青年が抱え込むには重すぎる経験が描かれています。
もしあなたに同じことが起きたら…?
戦争で直面した、取り返しのつかない出来事を、どう受け入れ、その後の人生を生きて行くのでしょうか。

『夏の葬列』は「くもんのすいせん図書」に選ばれています。

私はくもん教室を始めてから、”くもんのすいせん図書”を知り、そこに紹介されている本を、日々楽しみながら、趣味を超えたライフワークとして読んでいますよ。

面白そうな本がたくさん紹介してあって、ゆうすけが、また勉強しないで本読んじゃうわね。

「くもん教室」は、独自の教材(算数・数学、英語、国語)を使って、「自分で学ぶ力(自学自習力)」を養います。「可能性の追求」を大切にしている教室です。

「くもんのすいせん図書」は、子ども達に人気が高く、優れた内容の650冊を選りすぐって紹介したものです。詳細は、「くもんについて」をご覧ください。

封印するつもりだった記憶と残酷な事実

山川方夫は、筋の転換の面白さ、意外性、どんでん返しを得意とする作家で、ショートシートと言われる超短編をたくさん書いています。この作品は1962年に発表した小説で、山川方夫の中では断トツに有名な作品です。

終戦直前、東京からやって来た彼は、この町で空襲に遭います。そこに二つ上の、同じく疎開児童のヒロ子さんがいて、いつも彼をかばってくれていました。

空襲警報を聞いて、大きな爆音と大人たちの叫び声が交錯する中、彼は「ああ、ぼくはヒロ子さんといっしょに殺されちゃう。ぼくは死んじゃうんだ」と思います。

当時彼は小学校三年生でした。死の恐怖は想像を絶するものだったと思います。

彼は後に、「助けにきてくれた少女を、わざわざ銃撃のしたに突きとばした」と言っていますから、当時のことを覚えていました。「彼は彼女のその後を聞かずにこの町を去った」のです。

そして、「この傷にさわりたくない一心で海岸のこの町を避けつづけてきた」彼が、十数年経った今、「自分の身をかるくするためにだけ」にこの町にやって、残酷な事実を知ることになります。

すべてを知ってしまったあと、彼はこころの中でこうつぶやきます。

――でも、なんという皮肉だろう。(中略)……まったく、なんという偶然の皮肉だろう。

『夏の葬列』 山川方夫 集英社文庫 P15-16

「偶然の皮肉だろう」と言わせたあと、小説は2段落続きます。物語としてはここで終わりにしてもよさそうですが、作者はさらに彼のこころの風景を書き連ねます。

重苦しい余韻から想像する彼のその後

この最後の2段落の重苦しい余韻…… ここが実に痛ましく切ないです。

戦争という極限状態の中で、小学校3年生が起こした行動は、不可抗力(人間の力ではどうにもさからうことのできない力や事態)です。

不可抗力が起こした顛末(事の最初から最後までの事情)は、運命のいたずらというには、あまりに過酷なものでした。

もはやにげ場所はないのだという意識が、彼の足どりをひどく確実なものにしていた。

『夏の葬列』 山川方夫 集英社文庫 P16

同じ体験はとても想像が及びません。ですから、自分だったらその後をどう生きるのかなんて考えても、薄っぺらいことしか浮かびません。

反戦活動をするとか、同じような悲惨な運命を背負った人を救済するとか、あるいは世界各国の戦地に赴いて救助支援をするとか。

彼が選んだ選択。それは、「埋葬」でした。一生一人で抱えて生きて行くことを選択したのだと思います。

愚かな戦争があっても、人は生き続けていく

この小説は、戦争の冷酷さ、むごたらしさ、無慈悲さを、切なく感情に訴えかけています。戦争の愚かさを痛烈に皮肉った作品とも言えるでしょう。

どれほど傑出し、どれほど雄弁で、どれほど万民の心を揺さぶる反戦のスピーチがあったとしても、それを聞くよりこの作品に触れた方が、はるかに戦争の愚かさが心に刻まれると思います。

生き残った人々は、愚かな戦争に傷つき翻弄されながらも、その後の人生を生きて行かなければいけません。

もしかしたら、(2024年)現在、彼(主人公)はまだ生きているかもしれません。であれば、是非とも彼にインタビューして、その後の人生を聞いてみたいですね。

そしてあなたが『夏の葬列』を読んだ後何を思うのかも、いつかぜひ聞かせてください。

保護者さまへ

『夏の葬列』は現在中学校二年生の教科書に載っています。とあるサイトによれば、1978年から中学校の教科書に載っているようなので、保護者の皆さまも、中学時代に読まれたかもしれません。

私はこの年まで、この作家を全く知らなかったので、娘に「『山川方夫』って知ってる?」と聞いてみました。「知らない」といいます。「『夏の葬式』っていうさあ」と切出したら、「あー、畑の中に男の子と白いワンピースを着た女の子がいて、それから空襲が来て、・・・。」と語りだしたので驚きました。その後タイトルもあっさり訂正されました。

娘は、小学校のときSAPIX(中学受験塾)のテキストで出て来たと言っており、その後中学校でも、授業で再会したようです。

確実に娘の心に、この作品が刻まれていることを感じました。そして、この小説の力を確信しました。

現在、容易に手に入るのは集英社文庫の『夏の葬列』です。

9作品が収録されています。7つの超短編と2つの中編小説です。全部読みましたが、『夏の葬列』を読むだけで十分です。

朗読について

この小説は、非常に多くの人がYouTubeに朗読を上げています。朗読すると、約20分程度なので、聴くにはちょうど心地よい長さなのだと思います。

私は何といっても、ナレーター窪田等の朗読をお勧めします。

何度聞いても心地がよいです。スピードと間合いが絶妙なのです。

セリフのナレーションはさすがにプロであり、効果音などもなかなかよいです。

その他には寺山尚正さんの朗読「朗読のアナ」もよいです。こちらは、画面に文字が映し出されるので、音読を聴きながら目で読むこともできます。

当ブログは、公文式教室を開設していた元指導者が、個人として執筆・運営しているものであり、株式会社公文教育研究会およびそのグループ会社(本部)とは一切関係ありません。

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