『ヘンダワネのタネの物語』~「ヘン」なことを気にしない勇気!

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「兼高かおる世界の旅」、ちょっと古いですね。

東京の西でくもん教室を開いているすずきです。

「ヘンダワネ」はペルシア語でスイカの意味です。途中で「ヘンダワネって、ヘンだわね」というダジャレが飛び出します。作者は、「ヘンダワネ」から日本語の「ヘン」(普通でないこと)を連想し、この物語を一気に作り上げたのではないかなあ。私はそんな風に想像します。

さて、あなたのまわりに、外国人の友だちやクラスメートはいませんか。
彼らが自分の存在の「ヘン」さを隠して暮らしているなんて、想像できますか。

『ヘンダワネのタネの物語』は「くもんのすいせん図書」に選ばれています。

私はくもん教室を始めてから、”くもんのすいせん図書”を知り、そこに紹介されている本を、日々楽しみながら、趣味を超えたライフワークとして読んでいますよ。

面白そうな本がたくさん紹介してあって、ゆうすけが、また勉強しないで本読んじゃうわね。

「くもん教室」は、独自の教材(算数・数学、英語、国語)を使って、「自分で学ぶ力(自学自習力)」を養います。「可能性の追求」を大切にしている教室です。

「くもんのすいせん図書」は、子ども達に人気が高く、優れた内容の650冊を選りすぐって紹介したものです。詳細は、「くもんについて」をご覧ください。

チェロキャバブ、ギャッベって何?

『ヘンダワネのタネの物語』は、新藤悦子さんが2012年に書かれた本です。若い頃にイランのあちこちを旅した経験が、この物語にたくさん盛り込まれています。

イラン人のアリは、日本に住む小5の男の子。アリのお母さんは、同じマンションに住んでいて、一緒にPTAの役員をして仲がよい直(なお)のお母さんに、両親不在の1日だけ、アリを預かってほしいと頼みます。

アリのクラスメートの直(なお)と、アリのサッカー部の後輩で直の弟の暖(だん)は、山に囲まれた東京の奥地にある叔母の家で、アリと一緒に過ごすことになります。

アリが主導して、チェロキャバブ(肉の串焼きとピラフ)というイランの代表的な家庭料理を作り、食後は、遊牧民が織るギャッベというペルシア絨毯(じゅうたん)の話しがはじまります。

そこから物語は、不思議な話(それがまさに「ヘンダワネのタネの物語」!字体が変わって書かれています。)に進んでいきます。
この不思議な話は、作者がイランで接した遊牧民から直接聞いた話ではないかなと、私は思いました。すごく描写が生き生きとしていて幻想的です。

各国で伝承されている民話は、その国の民族性や文化が表れるので、とても新鮮で興味深いです。

日本語がヘンな外国人を「ヘン」と思ってしまうのはどうしてだろうか

この作品は、日本に住むイラン人の家族が、作者の家に遊びに来たときの体験がきっかけとなって生まれたようです。
作者はあとがきで、「お父さんがちょっとヘンな日本語を話したとき、いやそうに顔をゆがめました。」と書かれています。

この物語でも、アリがお母さん(トゥーバさん)の下手な日本語をなじるシーンがでてきます。

みなさんは、ちょっと日本語のヘンな外国人に対して、どういう気持ちを抱きますか。

私は自分が外国で生活するまでは、外国人のヘンな日本語に対して、許容度が低かったです。特に東洋系で、一見して外国人かどうか分からない人に対しては、「あっ、この人日本人じゃない」っていう反応をしていました。

この頭の中の反応は、本人が隠しているつもりでも、顔に出ますので、相手に伝わってしまいます。

でも中国で暮らしていたとき、私は中国語をけなされたことは一度もありません。その逆です。毎回、「鈴木さん、中国語すごくお上手ですね。」と言われました。ほぼ例外なくです。これは挨拶言葉なのではないかと思うくらいです。

ちなみに私は、そんなに中国語が上手くありません。日本に住んでいる中国人が100人いたら、100人とも日本語で話した方がスムーズです!

中国の人は、外国人が中国語を話してくれるというだけで親しみを感じ、自分たちに対するリスペクト(尊敬の念)を感じとってくれるから、そういった反応をしてくれるのだと思います。

日本人が外国人に対して、リスペクトしていないなんてことはないですよね。でも、日本は、ほとんどが日本人ばかりで、日本語だけで生きていけるし、多くの人が共通にもっている常識がありますね。外国人慣れしていないのだと思います。

慣れていないから、無意識のうちに、違和感に対して敏感なのだと思います。

身近な外国人が、母国を愛し、母国語を愛し、母国の文化を愛していたら、二重の意味でうれしい!

叔母の家で過ごした晩、直は二階のアトリエで絵を描きながら、次のようなことを考えていました。

 トゥーバさんを責めながら、自分の気持ちをおさえていた。イランを好きな気持ちをかくしていた。サッカーがんばって、漢字おぼえて、ダジャレいって、みんなと同じように笑ってないと、「ヘン」っていわれてしまうって。
(そんなことしてたら、イランをきらいになる前に、自分をきらいになっちゃう)
 アリにそうなってほしくない、と直は思いました。イランを好きでいてほしい。モフセンおじさんが話した世界を、信じていてほしい。

『ヘンダワネのタネの物語』 新藤悦子 ポプラ社 P139

作者は2つのことを伝えたかったのだと思います。

1つは、アリに母国を愛し、母国の文化を愛し、その気持ちを自分の中心に据えて生きてほしいということ。
そしてもう1つは、外国人が日本で生きて行くことの難しさを、日本人に考えてみてほしい、ということです。

日本人がちょっと「日本で暮らしている外国人って大変だろうなあ」と考えてみるだけで、私は、直が感じているアリのように考える外国人は減ると思います。

そう考えると、上の2つのテーマはつながっていませんか。

私は、海外で暮らしたことがあり、受け入れられたことも、拒まれたこともたくさん経験したので、2つ目のテーマに敏感になってしまいました。

あなたが『ヘンダワネのタネの物語』を読んだ後、何を感じたのかも、いつかぜひ聞かせてください。

保護者さまへ

児童書でおなじみポプラ社から出ている本です。単行本で160ページ程度であり、行間と字も比較的大きいですから、お子さんは、1時間くらいで読めてしまうと思います。

この本は不思議な魅力を持った本だと思います。

直球で言えば、この本は「日本に住む外国人に対するエール」です。

一方で、アリ(イラン人の男の子)の心の内を通じて、日本人の外国人に対する無意識の先入観やバイアスに対しても、問題提起しているように読めました。

直が考えたように、お子さんは、「自国を愛し、自国の文化を愛することできないと、自分を愛することができない」という根源的なテーマを、自分事として考えることができるかもしれません!

日本人こそ、本当に日本や日本語や日本文化を愛しているか、考える必要がありますね。

当ブログは、公文式教室を開設していた元指導者が、個人として執筆・運営しているものであり、株式会社公文教育研究会およびそのグループ会社(本部)とは一切関係ありません。

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